スパコン騒動

何だかスパコン作る予算を削るとかそういう騒動が持ち上がってるようですが。
何だか勘違いをしている方がちらほらと居るようなのですが。


私が思うに、
スパコンを作ること自体の意義というのは、むしろ蛇足なのでは?
そりゃ世界一のものを作れれば偉いことは偉いのでしょうが。
そもそもコンピュータなんてのは、あくまで「道具」なのです。
それを作って、何かに「使う」ってのが本義であるわけで。


十八番の卑近な例えで言えば、
「極上の刺身を作るために、世界一の刺身包丁を手に入れる」のに近いかと。
目的は刺身であり、刺身包丁自体を誇るわけではないのですね。
世界一の刺身包丁があれば、腕の良い板前は自然と集まってきます。
腕の良い板前と世界一の包丁があれば、極上の刺身だって作れる。
手段と目的とを取り違えてはいけませんな。


資源もなければ国土もない日本において、最大の武器は技術らしいです。
ところが、応用分野や手先の器用さなら兎も角、
研究云々が絡む分野においては、アメリカの一人勝ち状態を許してしまっています。
理由は簡単。
アメリカにはとても良い「道具」があるんですね。
研究者は道具や設備の整った場所に居着きます。
当たり前ですよね。
そういうわけで、研究者・技術者はみんなアメリカに向かい、
技術国なはずの日本はそれほど重要視されていない、というのが現状です。


世界一のスパコンを作る、ということは、
すなわち(少なくともインフォマティクス情報工学)系分野においては)、
日本を研究・技術開発の主役とすることに他なりません。
生理学者で実験屋の私が言っても微妙に説得力ないかもしれませんが、
これからの時代の研究はどんどんインフォマティクス方向に移り変わっていくはずです。
インフォマティクスの力がない国は研究・技術開発において完全に後進国になります。
国力の多くを技術系に頼っている日本には、これはチャンスなのです。
しかしここで波に乗り遅れれば、下手すりゃ「何もない国」にすらなりかねない。


別に、実際に世界一になる必要なんて本来はないんです。
トップクラスであり、世界中の研究者・技術者に「日本」を意識させること、
そして、その分野での「足掛り」を作ることが重要なのです。